PAPA pa pa pa

パパが6カ月の育児休業をとって知れたこと

カエルの子守唄

 

 閑散とした田んぼに水が張られました。水面に映し出された空が田舎の景色に彩りを加えます。それを合図に生き物たちもこの水辺に集まり、それぞれの営みが始まるのです。

 子供の頃から親しんだこの風景の中、私は子育てをしています。それがとても幸せだなと感じるのです。

 

 GW中は、息子と一緒に過ごす時間をたくさん作ることができました。しかし楽しい時間だと思っていたのは私だけか、ここ最近は夜になるとママを求める傾向が強くなってきました。就寝前は必ずと言っていいほどママを恋しく、ギャンギャンと泣くのです。

 

 我が家は息子の寝かしつけを毎晩交替でしています。妻の日は嬉しそうに抱っこされて寝室へ向かうのに、私の日はまるで永遠の別れのようにママにしがみ付き、それを強引に引きはがして連れていく私はまさに悪役です。

 

 そんな毎晩のルーティーンが行われていたある日のことでした。

 腕の中で泣きながら暴れる息子をなだめるも、一向に落ち着く気配がありません。泣きじゃくり、ほてった息子に外の風をあてようと窓を開けてみました。

 

 その日の日中は梅雨前の夏日のようで、庭で水遊びをして過ごしました。夜は湿度も気温もちょうど良く、林の向こうから聴こえるカエルたちの大合唱が部屋へ流れ込んで来ました。風鈴を揺らすような優しい風が、私たちの肌を撫でます。

 

 心地よい空気が部屋に満ちたとき、不思議なほどピタリと、息子は泣くのをやめたのです。

 

 その表情はまるで、涼気の正体を探るような、外から聴こえる声を懐かしむような、そんな目をしていました。

 

 落ち着いた息子を布団に寝かせると、スッと目をつむり自分から就寝の準備に入りました。あとはいつもの通り、私がゆっくり子守唄を口ずさむと、静かな寝息を立て始めたのです。

 

 育児は1人では大変で、周囲の理解や協力が必要です。しかし、まさかカエル達にも助けられるとは。

 

 息子の寝顔を眺めながら、私もまた彼らの子守唄を聴き入るのでした。

 

おわり