PAPA pa pa pa

パパが6カ月の育児休業をとって知れたこと

乗り越える ~息子の頑張り~

 待ち望んでいた第二子の妊娠が判明してから、妻の悪阻は一気に重さを増しました。

 

「常時」吐き、水も飲めなくなった彼女に対する、即入院の診断は当然でした。

 

 

 息子からすると、いつも夕方に帰ってくるママが、その日を堺に突然会えなくなってしまったのですから、環境の変化は大きかったに違いありません。「ママは病院でねんねしてるよ」という稚拙な説明も、彼にとっての重大さとギャップが大き過ぎたでしょう。

 

 しかし、息子は気丈に振る舞いました。ママ恋しく夜に泣いたりするでもなく、淡々とその日々を過ごしているように見えました。もちろん、それが彼の心の内の全てではないと、推測するのは簡単でした。2歳児がすんなり受け入れるはずがないのです。

 

 それは、実家で夕飯をもらった日のことです。

 夕暮れの中をふたりで歩いて帰りました。虫の音と肌に心地いい風が、夏の始まりを感じさせます。

 普段は道端の色んなものに惹かれ、足を止めては動かない息子ですが、いつになく素直に歩きました。彼の口調も穏やかで、まるで彼が私に合わせてくれているかのようです。

 それはとても違和感のあるもので、無理に作る「いい子」の表情は、父の心を揺さぶります。まるで、心の中にぽっかり空いた穴を、一生懸命に埋めようとしているようでした。

 

 たまらず「明日、ママに電話してみようか」と提案すると、

 

 「ママ?ママに?」と眼を輝かせます。

 

 やっぱり寂しいのです。

 

 「無理するなよ」と言葉をかけるも、彼がその意味を理解したかどうかは分かりません。しかし、きっと彼なら乗り越えられるだろうと信じました。私に出来るのは彼が生き生きと毎日を過ごせるよう見守ることでした。

 

 子供たちが何かに頑張る姿は、大人の胸を打ちます。しかし、子供たちが寂しさと戦う姿は、胸を絞めつけます。そんな目に見えない頑張りを、私はしっかりと抱きしめてあげたいと思いました。

 

 父子で手を繋いで歩く夕暮れの空は、とても綺麗でした。オレンジ色のアスファルトに伸びる2人の影を見ながら、しばらく続く父子生活をどう過ごすか、息子に何ができるかを考え、身を引き締めたのでした。

 

おわり