「どう? 仕事、慣れた?」 車椅子を固定しながらの何気ない会話の中、常連のお客様はいつも優しく声をかけてくれます。 前職を退職し、職業訓練に通って資格を取り、その後、母が一人で続けてきた福祉タクシー事業に本格参加してから、もう4か月が経とうと…
「我慢してる息子をもっと褒めたいけど、表現が足りない。感謝を伝えても、本人はポカンとするしね。」 これは、妻が悪阻入院で1ヶ月以上不在にしていた時に、私が知り合いに話した内容です。 その時はまだ彼の頑張りを十分に感じ取れていなかった。だから、…
待ち望んでいた第二子の妊娠が判明してから、妻の悪阻は一気に重さを増しました。 「常時」吐き、水も飲めなくなった彼女に対する、即入院の診断は当然でした。 息子からすると、いつも夕方に帰ってくるママが、その日を堺に突然会えなくなってしまったので…
いつもエッセイを覗いていただき、本当にありがとうございます。 Twitterではご報告しておりましたが、6月の上旬に妻の第二子妊娠が判明し、それと同時に妻の重度悪阻、それによる入院と、私も余裕が無くなりエッセイを更新できていませんでした。 約2か月に…
「もう発券しちゃったから、変更は効かないんですよ~」 声色だけ明るくして、女性はそう言った。 顔を強張らせた私は、息子と一緒に彼女の言葉を聞いていた。 サッカークジのtotoは、一口100円から購入できる手軽さが魅力だ。普段は賭け事を全くしない私…
閑散とした田んぼに水が張られました。水面に映し出された空が田舎の景色に彩りを加えます。それを合図に生き物たちもこの水辺に集まり、それぞれの営みが始まるのです。 子供の頃から親しんだこの風景の中、私は子育てをしています。それがとても幸せだなと…
外出自粛下、皆さんはどうお過ごしですか? 我が家は連日の好天も手伝って、GWは日の半分を庭にテントを張って過ごしていました。 私達がこの家を買うとき、何よりもこだわったのは庭の広さでした。 庭でBBQがしたいとかキャンプがしたいというのは、おまけ…
父の舟 皆さんは、パングラオ号という舟をご存知でしょうか。それは5年ほど前に、私の父がベニヤ板で手作りした小さな舟です(みんな知ってるわけない)。 その舟は、父の冒険の夢であり努力の結晶でした。父と私と私の友人を乗せ、試運転のために海に浮かべ、…
こんなに窮屈で不安な春を迎えるとは、誰が想像したでしょうか。 新型コロナウィルスの影響で、多くの卒業式が簡略化されました。いつもなら、子供の成長を実感して涙を流したり、新しい日々に希望を抱く季節であるのに、今年は風景が大きく違います。 こん…
「3/30〜4/2は給食がありませんので子供達にお弁当を持たせて下さい」 保育園から連絡のお手紙を受け取ったのは今月の初めでした。春休み期間の希望保育を申請して欲しい旨の通知に加えて、その文面は添えられていました。 今思えば、妻がソワソワし始めたの…
「いい大学に入って、いい会社に就職しなさい」 当時、私の周りにいた全ての大人たちは、その概念を疑うことなく子供たちに教え込んでいました。 受験の波にのみ込まれた15歳から、就職が決まる25歳まで、私の青年期はそんな言葉が詰め込まれた時代でし…
「明らかに障害を持ってる人が、同じ会社のシャツを着た子連れのママと、おつかれ〜なんて軽い挨拶を交わす光景があるとして、それを見た子供は、それが当たり前として育つかもしれない。近くでその光景を見かけた他の人も、いつかそれが当たり前になるかも…
幼児に厳しく指導する親御さんって、意外と多いものです。 数年前に、姪っ子が参加したストライダー(ランニングバイク等)の大会を観に行ったとき、会場脇で厳しくお子さんを叱責するパパを目撃しました。 全身をライダースーツの様な本格的なユニフォームで…
「そんな事で泣くな!男なら少しくらい痛くても我慢しろ!」 父とはよく育児の考え方で衝突することがあります。最近はその衝突が面倒臭く、スルーしてしまう事も多々あります。孫である私の息子が父に懐いているので、愛情を注いでくれていることに疑いはあ…
明けましておめでとうございます。新年初回のパパエッセイ、よろしくお願いします。 我が家は朝のNHK以外あまりTVをつけないのですが、なぜか妻は毎回必ず「はじめてのおつかい」の放送情報を仕入れて来ます。夫婦共にあの番組の大ファンなのですが、私はそ…
年末の雰囲気が好きです。 1年頑張ったねと、身体も心も休めて家族と過ごす時間が温かく体に染み込みます。 ゆく年くる年を観ながら、TVから流れる除夜の鐘を聞くと「今年も頑張ろう」と、心機一転、というより一年の鬱憤がリセットされる感覚で切り替えられ…
今年の冬は暖冬になるようだと、天気予報が伝えています。 12月中旬を過ぎてもほとんど雪は降らず、肌を刺すような寒気は感じられません。このまま過ごしやすい日々が続けばいいと思う反面、新潟の冬の景色に雪が無いのは寂しい気がします。それにきっと、ド…
私は、一日のうちに何回、息子に向かって「ダメ」「しないで」と、彼を制限する言葉を投げかけているのでしょうか。 柵を越えてはダメ、物を投げてはダメ、洗い物を邪魔しないで下さい、1人で階段を上がらないで下さい、もう挙げたらキリがありません。 2…
「ダダンダン!ダダンダン、だぁ!」 半分開けたAmazonの段ボールから、ちらりと見えたおもちゃのパッケージ。すぐに中身がダダンダンであると気付いた息子は、夢中になって早く箱を開けろとせがみました。 ダダンダンはバイキンマンが作ったロボットのキャ…
晴れない空 思えば、ずっとつまらない顔をしてたのは私でした。 練習中も、先輩の話を聞く時も、普段廊下ですれ違う時も。 そんな後輩をよく思う人間なんているはずないのです。ましてや血気盛んな中学生なのだから。 重たい空の下、重苦しい雰囲気の中で、…
え!延長できないって!? 「いまハローワークに給付金の延長について電話で聞いたんだけど、なんか無理らしいよ?」 育児休業中の私に電話をくれたのは仲のいい総務課の先輩でした。いつも育児休業給付金(以下、給付金)の申請をはじめ色々とお世話になっ…
「さとしナイッシュー! …やま!今のはさとしの得点だよ!お前ももっと撃って行かなきゃダメだよ!」 キーパーが弾いてこぼれたボールを、すべり込んでゴールに押し込んだ私に、先輩が掛けた言葉は賞賛ではなく、棘のように刺す冷たいアドバイスでした。 「…
まだまだ時代は変わっていない 先日、出張に行った際に、同世代の方々、特に男性とお話しする機会がたくさんあり、同じ時代を生きて来たということもあってとても会話が弾みました。 その流れで私が育児休業を6カ月取得した話をすると、みんな一様に驚き、…
不安な親、元気な子供 病院と職場と家を行き来する生活はやはり大変でした。母にも「付き添いシフト」に入ってもらい、夫婦2人+ときどき母、の3人交替制で回しました。それぞれに仕事があるため、空く時間、休める時間を共有し、病院でバトンタッチしなが…
入院 体中に管を付けられた息子を見て、心が締め付けられました。 この数日で何回注射をしたんだろう。よく頑張ってるね、偉いぞ、とベッドで昼寝する息子の頭を撫でました。 入院することになった地方の基幹病院はとても巨大で、受診前は「今日はこの建物を…
人生でこんな夏は初めて 夏の後ろ姿がとても遠くに感じる今日この頃。秋を感じる涼しい風が吹いています。 思えばこの夏はずっと息子の病院通いで終わりました。7月に手足口病、8月にRSウィルスと溶連菌と、各種ウィルスに侵されている間は、夫婦でそれ…
そんなに大きな物音でもないのに睡眠から覚めてしまう時があります。 起きて何事か確認して、なんだそんな事かと、また眠りに落ちていく。二度寝の幸福感はたまりません。しかしその日、目を開けた私を待ち受けていたのは異国で出会った友人の迷惑なプレゼン…
若い頃、ワーキングホリデービザを利用してオーストラリアで過ごしていた事があります。 期間は8ヶ月くらい。 学生時代は、バイトをしてお金を貯め、長期休暇は東南アジアをバックパックで旅する、いわゆるバックパッカーをやっておりました。 そんな学生ラ…
息子の発熱の多さに、夫婦で戸惑っています。 感覚的に毎週病院に行っているような気がします。 保育園に通い出したらよく熱を出す、とは覚悟していましたが、まさかこれほどとは… 手洗いうがい・睡眠・栄養バランスは気をつけていますが、これだけの頻度で…
今でも色褪せない夏の思い出があります。 私が小学一年生のとき、家族で父の実家である鹿児島へ旅行に行きました。 父と叔父が交代で運転して、一日中車で走り続けました。夜の高速道路にワクワクしながら、流れていく知らない景色を眺めていました。 車内の…