子供に心の土台を準備する
「そんな事で泣くな!男なら少しくらい痛くても我慢しろ!」
父とはよく育児の考え方で衝突することがあります。最近はその衝突が面倒臭く、スルーしてしまう事も多々あります。孫である私の息子が父に懐いているので、愛情を注いでくれていることに疑いはありませんが、現代の子育て世代からみると、昭和を生き抜いた人の考え方は、ギャップを感じずにはいられません。そんな父から繰り出される発言は、多くが反面教師となり私の脳を新しい価値観へとアップデートしてくれます。
先日、父の、冒頭の発言を聞いた時のことです。
「息子はどちらの性を持つのかな?」
そんな疑問が私の頭に浮かびました。
身体は男性として生まれてきた息子ですから、女性に性的好意を持つ可能性が高いのかもしれません。しかし、今のところそれは分かりません。どちらにも当てはまらない場合もあります。
日本人におけるセクシャルマイノリティーの人は、人口の3~5%、学校のクラスにすると1クラス1人の割合でいると言われています。小学生の時に通っていたあの教室にも、そういった個性を持つ友達がいたのではないか。そう考えると、とても身近な話だと思うのです。
私は専門家ではないため、それが生まれつきか後天的かは分かりません。しかしどちらにせよ、息子がどういった性を持つのか、私が決めることはできません。それは女性が好きな私に、男性を好きになるよう仕向けるのと同じくらい間違っていることです。
彼はこれから、きっと誰かを好きになったり、誰かと友情を育んだりするでしょう。その時に、彼が感じるままに、伸び伸びと楽しめるような心の土台を、彼の中に用意できたらと思います。まずは親である私が「息子がどんな性であるかは分からないし、彼が決めること」というスタンスで彼と関わっていきたいです。
心の土台の話は、性別だけでなく、障害、生い立ち、学歴、国籍、年収、見た目、etc、色々なことに当てはまります。
2歳になったばかりの息子には、ほとんど価値観と呼べるものが入っていません。強いて言うなら「アンパンマンは最高だ」くらいのものです。これから、たくさんの出会いや経験を通じて、彼独自の世界を作り上げていきます。その過程では、偏った価値観や古い考え方に直面する時もあるでしょう。その時に、ちゃんと違和感を感じ取れるよう育って欲しいのです。心の土台に余計な垣根が無いように、親として出来ることを考えていきたいのです。
将来、もしも、孫の性的志向が自分の思っていたものと違った場合、父はどういう反応をするでしょうか。父が60年以上かけて培ってきた自身の価値観が、どういう風にその事実を乗り越えるのか、事態が発生していないにも関わらず気になります。きっと父なら、愛する孫の味方になってくれると信じています。私を育ててくれた人ですから。
いづれにせよ、親である私は、どんな事でも息子に寄り添ってあげたいと思うのです。
おわり
ぜひ、併せて読んで欲しい資料が法務省より配布されています。
「多様な性について考えよう 法務省人権擁護局」
http://www.moj.go.jp/JINKEN/LGBT/index.html