夏が子供達にくれること
今でも色褪せない夏の思い出があります。
私が小学一年生のとき、家族で父の実家である鹿児島へ旅行に行きました。
父と叔父が交代で運転して、一日中車で走り続けました。夜の高速道路にワクワクしながら、流れていく知らない景色を眺めていました。
車内の狭い空間に両親と叔父と兄弟3人、6人でわいわいしながら過ごす時間がとても楽しかったです。
今なら長時間運転の大変さは身に染みて分かりますから、あの頃の父達には感謝です。
父の実家には古いタイプライターがあって、叔父に使い方を教わりながら、平仮名を打って遊びました。今思えば、あの夏の絵日記とタイプライターは、私が初めて文章に触れた季節だったのかもしれません。
近くの山には蟹がいて、山にも蟹が住んでいるんだと知りました。でも確か、あれは海に面した山だったように思います。沢蟹だっているわけですが、あの時の私には新しい発見でした。
綺麗な海には人が溢れていて、1つか2つ上の親戚のお姉ちゃんが、かけた水中眼鏡に水を溜めながら、元気にはしゃいでいた姿を思い出します。
大人になってからの思い出はアッと言う間に流れて行くのに、もう30年近く前の記憶がなぜこんなにも鮮やかに思い出せるのでしょうか。
幼児期が終わり、少しだけ大人になった小学一年生の夏。
動ける範囲が広がり、物事を認識する力もついて来て、でも好奇心は変わらず満々で。スポンジの様に見たり触れたりすることを片っ端から吸収していたのだと思います。
スポーツの世界では、5〜12歳までの時期に子供達は飛躍的に運動神経が発達するそうです。
これはスポーツに限らず、脳の発達にも同じことが言えるのではないでしょうか。この時期にたくさんの物事に触れさせて、経験をすることが大切なんだと思います。
科学の話を持ち出すと難しく感じますが、単純に、人生で夏を一番楽しめる時期なんじゃないかと思います。
そんな素敵な季節に子供にたくさんの刺激を与えてやりたいものです。
鹿児島からの帰り道、初めて稲妻を見ました。
真っ黒な雲の中を黄色い光がバババッと走るのを見て、アニメやイラストで描かれているあのギザギザのシルエットを思い出しました。しかし、そんな可愛らしいものではなく、その凄まじい迫力にただただ見入ってました。
「これが本当のカミナリなんだ」
自然の偉大な力を知り、その恐怖を初めて知った日でした。
今までは絵本やアニメの中でしか感じる事ができなかった物事を、現実の世界で触れるようになりました。
それは、大人になる第一歩を踏み出したということでしょうか。
あの夏がくれた思い出は、今でも私の人生において輝いています。